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派遣は「出勤者7割」にカウントされない?
派遣は「出勤者7割」にカウントされない? 正社員の分まで働かされる理不尽さ
1月8日、1都3県を対象に緊急事態宣言が発令されてから、テレワークに関する相談が相次いでいる。そのほとんどが、「テレワークをさせてもらえない」というものだ。
テレワークをめぐる「非正規差別」の問題とその違法性についてはすでに指摘したが、この数日間に寄せられている相談も、テレワークが認められず、派遣やパートで働く労働者が「捨て駒」のように扱われているものばかりである。
実は、政府の掲げる「出勤率7割減」に非正規はカウントされておらず、出社しなければできない仕事を「派遣」に割り当てられる実態が浮かび上がってきている。
本記事では、ここ数日の間に寄せられた相談事例を紹介しながら、5月の緊急事態宣言の発令時とは異なる会社の対応についても考えていきたい。
出勤率7割減に、派遣はカウントされてない!?
1月8日以降、私が代表を務めるNPO法人POSSE、および連携する総合サポートユニオンには、すでに60件を超えるテレワーク関連相談が寄せられている。その半数以上が、派遣やパート、アルバイトなどの非正規労働者からのものである。
「正社員はテレワークになったが、派遣社員は通常出勤と言われた」
こうした非正規差別の相談が目立つ。政府は、緊急事態宣言を発令した際、テレワークを推進し、職場の出勤者数の7割減を目指すとしているが、実態はこれと大きくかけ離れている。
なかには、非正規労働者を頭数に入れず、7割減を達成したように見せかけている職場もあるようだ。
「局はテレワークを推奨しており、実施率を上に報告しているが、その数に派遣は入れられていない。自分の所属する部署はほとんど派遣だが、数人いる正社員は全員テレワークになっている」(メディア関係、派遣)
「派遣先の正社員は7割以上テレワークになっているが、派遣社員は別扱い。去年から出勤し続けており、差別を感じる」(IT企業、派遣)
このように、出勤者数「7割減」という目標が掲げられる一方で、非正規労働者は出社を強要されているとの声が多数寄せられているのだ。
持病があっても認められない
こうした相談のなかには、自身が持病を抱えていたり、高齢の家族と同居しているなど、さまざまな事情を抱えた労働者もいる。こうした事情が考慮されず、出勤を強要され、さらには「それが嫌なら辞めろ」といった対応もみられる。
「緊急事態宣言が出ても、会社がテレワークを導入してくれない。同僚には基礎疾患のある人もいるが、テレワークを希望したところ「嫌なら辞めろ」と言われたそう」(食品、契約社員)
このように、テレワークを求めたことが、会社側の辞めさせる動機になっているのである。こうして持病を抱えていたとしても、労働者には、感染リスクを抱えながら出勤するか、仕事を失うかのどちらかの選択肢しか示されていない。
また反対に、自分は持病のある家族がいるためテレワークが認められたが、それ例外の人は認められなかった、との事例もある。
「5月の緊急事態宣言ではテレワークになったが、今回は各自が申請する仕組みになった。自分は家族に疾患を抱える者がいるため認められたが、緊急事態宣言の発令を理由に申請した同僚は却下されていた。」(IT、正社員)
先に見たように、政府の「7割減」との掛け声は、現場には届いていないのだ。
なぜテレワークを認めないのか?
これだけ感染が拡大しているにもかかわらず、なぜ企業はテレワークを認めないのだろうか。非正規労働者のテレワークを拒否する理由として代表的なのは、セキュリティを理由としたものである。
「派遣以外は、週1~2回テレワークを実施している。緊急事態宣言を受け、テレワークをお願いしたが、「取引先との関係で、セキュリティ上無理だ」と言われてしまった。」(製造業、派遣)
「5月の緊急事態宣言時は、正社員も非正規もテレワークになったが、解除後、非正規は全員通常出勤に。今回の緊急事態宣言でも、正社員はテレワークになったが、派遣は「個人情報の漏洩が心配」と、出社を命じられている。」(設計事務所、派遣)
このほか企業は、「テレワークに適さない業務内容だから」、「生産性が下がるから」、「公平性の観点から」、「出社=善だから」、「規則がないから」、「契約上無理だから」など、実にさまざまな理由をつけ、テレワークを拒否している。
「同じ業務」でも差別が横行
なかでも、「テレワークに適さない業務内容だから」とされながら、実際には正社員と同じ業務に従事しているという訴えが多いことに注目させられる。
「上司にテレワークができない理由を聞くと、「派遣の業務はテレワークに向いていない」と言われたが、同じ仕事をしている新入社員(正社員)は、入社して3日でテレワークに移行している」(卸売、派遣)
「「入社して日が浅く、業務の習熟度が高まっていない人には、テレワークをさせる意向はない」と言われたが、正社員は入社して1週間でテレワークを認められている」(通信、派遣)
このように、さまざまな理由がつけられて派遣は差別されている一方で、納得のいかない状況に置かれている派遣労働者は少なくない。「非正規雇用差別」の存在が浮き彫りになっているといえよう。
コロナで「なくてはならない仕事」を派遣に?
「非正規差別」がさらに際立っているのは、危険な出勤を派遣に押し付けようとしている職場に関する相談からも読み取ることができる。
正社員と同じ仕事をしているにかかわらず、非正規であることを理由にテレワークが認めらないという相談が寄せられる一方で、出社しなければできない仕事を「あえて」非正規労働者に割り当てるような事例もみられるのである。
「正社員は週4日、テレワークになっているが、派遣は全員出社している。出社して郵便物の仕分けや宅配便の受け取り、発送、資料のPDF化などを担当している。こうした仕事をしないわけにはいかないため、派遣のテレワークを認めないのではないか」(通信・事務、派遣)
「正社員はテレワークになり、出勤率は3割以下になっている。自分は週5日出勤し、電話番や荷物の受け取りなど、出社しなければできない仕事ばかりを担当させられている」(製造業・事務、派遣)
これらの相談からは、宅配便の受け取りや電話番など、出社しなければできない仕事を、自社の正社員にではなく非正規労働者ばかりに押し付ける企業の存在が浮かび上がってくる。
本来、「なくてはならない」仕事であれば、正社員が担い、非正規には補助的で、責任の軽い仕事が割り当てられるべきだろう。企業は正社員に「責任のある仕事」を任せることで、非正規との待遇の格差を正当化してきたからである。
しかし、上記の事例ではまったく逆に、コロナの感染が拡大するなかで、低処遇の非正規労働者が「なくてはならない危険な仕事」を、何の補償もなく担わされているのだ。
こうした企業では、正社員であれば出勤命令に強く抗議するかもしれないが、立場の弱い派遣労働者であれば、出勤せざるを得ない業務を押し付けやすいと考えているのだろう。
結局、派遣労働者は処遇も低く、危険な業務を押し付けられる「差別された雇用」であることが、コロナの中で改めて明瞭になってしまった。
こうした差別の横行の中で、SNS上では「#テレワーク差別に抗議します」、「#テレワークできない」などのハッシュタグをつけたツイートが広がりはじめている。
感染者の数が過去最高を記録する日も多くなった現在、自分の命を守り、感染を拡大させないためにも、テレワークの実施は急務である。企業の非正規差別、テレワーク差別を許さないために、ぜひ多くの人に声をあげてほしい。
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派遣社員テレワーク化が企業にもたらした成果